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 2007年2月、東京・高輪プリンスホテルで開催された、「2006年度・第30回/日本アカデミー賞」は、鈴木ジブリを飛び出した細田守監督らが制作する『時をかける少女』が「最優秀アニメーション作品賞」を獲得した!!
 今回から、「アニメーション作品賞」が正賞として加わることになったため、記念すべき第1回受賞作となる。名門だったはずのジブリは、第1回アニメーション作品賞を獲得できなかった。
 ノミネートされた中に、当然ながら鈴木プロデューサー自慢の『ゲド戦記』が含まれていたが、全く相手にされなかった。カスリもしなかったという方が正しいだろう。

 鈴木プロデューサーが、TVを中核に全マスメディアを動員した結果、ジブリなら必ず客が入ると見越した映画館が一斉に、素人監督作品の『ゲド戦記』へとなびいた。
 結果、『ゲド戦記』は興行収入77億円を記録し、協賛した日テレ、アサヒビールなどは笑いが止まらなかった。どんなド素人作品でも、ジブリが制作すれば必ず多額の興行収入が得られると分ったからだ。
 それでも鈴木プロデューサーは、公開前には100億円は硬いと豪語していた。よほど自分の策に強い自信があったのだろう。

 一方、『時をかける少女』は、大都市圏でも上映館は1館か2館しかなく、それも小さな映画館ばかりだった。ジブリに逆らった連中が制作したアニメを上映したら、以後、ジブリ作品の上映をさせてもらえない・・・・・配給会社や協賛会社の無言の圧力が無かったとはいえないだろう。
 結果、終盤になって、少しずつ『時をかける少女』の上映館が増えていったが、宣伝に踊らされた主婦層がぞくぞくと『ゲド戦記』に押し寄せたため、その動きは僅かなものに止まった。
 
 結果、『時をかける少女』の興行成績は7億円に止まり、鈴木プロデューサー側の圧勝となり、鈴木ジブリ作品は2006年度邦画興行収入の第1位となった。2006年度最大の勝ち組は鈴木ジブリとなり、『ゲド戦記』がその栄冠に輝いたのである。
 その圧倒的戦果を掲げ、鈴木ジブリの『ゲド戦記』が高輪プリンスホテルに乗り込んできた。が、結果は惨敗。これを見て、まだ日本に良心が残っていると感じたのは私一人ではなかったはずだ。

 原作者のアーシュラ・K・ル=グウィン氏のいるアメリカでの上映も、2009年まで禁じられているが、仮に上映されても必ずポシャルだろう。 
 鈴木プロデューサーが胸を張る「第63回/ヴェネチア国際映画祭」での上映も、コンペティション部門での出品ではなく、特別招待作品で上映されたが、それでも酷評が相次いだ。
 一方、配給会社、映画館、メディアがジブリ大事とそっぽを向いたはずの『時をかける少女』は、「第61回/毎日映画コンクール アニメーション映画賞受賞」、「第10回/文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門」でも大賞を受賞した。
 結局、バカを見たのは日本の主婦層と子供たちであり、特に主婦層の病的なまでのブランド志向と、眼力の低さには幻滅するしかない。
(07/04/04)
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