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第133回
 すでに“千秋寺亰介”の名を公開したので申し上げるが、『怨霊記』は、明治時代から大正時代にかけた陰陽師たちのドラマだ。
 夢枕獏氏も『陰陽師』の舞台を、明治に置く予定だったそうだが、お先に書かせて頂いた次第。文芸評論家で知られる北上次郎氏も、「日経新聞」で『怨霊記』を絶賛し、「本の雑誌」でも大絶賛してくれた。 詳細は、近々立ち上げる千秋寺亰介のオフィシャルサイトで公開するが、一部だけここで紹介する。
 
 「地の底に住む凶霊たちと戦うのは、怨霊師と呼ばれる少女たち。その存在を探知する役目の陰陽師とコンビを組んで、全国を見張っている。・・・・・(中略)・・・・・彼らは四国山中に住む大忌部(おおいんべ)一族だが、裏忌部と呼ばれる集団や、そこからわかれた別の集団もいたりして、その戦いもまた尋常ではない。その面白さが一つ。
 次に、時代を明治にすることで、明石元二郎を筆頭にして日本陸軍が絡んでくること。つまりファンタジーに現実のしっぽがつくのだ。これがなかなかいい。
 さらに構成もうまく、世界を解こうとする強い意志が物語の底に流れているのもいい。陰陽師伝記ホラーは類書が少なくないが、実に愉しみな新人の登場といっていい。
 「四国結界篇」とうたっているように、おそらく大長編になるものと思われるが、堂々の開幕である。今後も注意して見ていきたい。」(2001年6月10日)
 
 「最近この手のものが面白くてしょうがないのだが、もちろん、何でもいいわけではない。この長編の美点は、まず構成が巧みであることだ。
 四国山中に住む大忌部の一族が怨霊と戦う話は、設定もうまいし、ディテールもよく、迫力もあってなかなか読ませる。
 怨霊の存在を探索するのは陰陽師で、これが四人いるので四天王。ところが実際に戦うのは怨霊師と呼ばれる女性たちの役目で、これも四人いるので四天女。・・・・・(中略)・・・・・怨霊とハンターたちとのファンタジックな戦いは突如として壮大な歴史活劇に転化していくのである。本書はまだ一巻なので、本当に今後そういうふうに展開していくのかどうかはわからないけれど、その予感が物語を引き締めている。」(2001年6月某日)
 
 同様の高い評価は、小説家の大御所である高橋克彦氏、夢枕獏氏、富樫倫太郎氏からも頂戴している。だからおそらく正当な評価と思われる。
 『怨霊記』は伝記小説なので実在の人物が数多く登場してくる。
 原始神道と博物学の権威・南方熊楠(みなかたくまぐす)を筆頭に、日露戦争当時、ヨーロッパの情報機関を作った明石元二郎(後に中将)、辻演歌師の祖の添田唖然坊(そえだあぜんぼう)、修験道の大権化で明治の怪物と称され、皇室に取り入った隠田の行者・飯野吉三郎(いいのきちさぶろう)、朝鮮総督府総督で陸軍大臣も勤めた寺内正毅(てらうちまさたけ)、明治最大の経済人で初代第一国立銀行頭取の渋沢栄一、関西経済界のドンで通天閣と新世界を作った土居通夫、等々。
 
 そのほか、通りすがりの様にあたり前に登場するのが、日ユ同祖論の佐伯好郎(さえきよしろう)博士、千里眼能力の御船千鶴子(みふねちづこ)、念写実験にのめり込む福来友吉博士、バルチック艦隊を撃破した東郷平八郎、日韓併合に奔走した伊藤博文、中国の政治家・孫文、等々だ。
 同じファンタジーでも“ダーク・ファンタジー”の部類なのだろうが、主人公たちの生き様は、清純で稟として美しく描いたつもりだ。

(06/11/06)
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