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第74回
 『ちびまる子ちゃん』(集英社)でお馴染みの作家さくらもこ子氏が、新潮社から『富士山』という本を発行していた。

 『富士山』は、まるごと全部”さくら本”で、彼女のエッセーや、まる子ちゃん情報等々が満載されているファン対象本だった。

 ふつうこの手の本は、「○×クラブ」「□△友の会」というようにして通信販売を主体とするが、さすが『ちびまる子ちゃん』は”平成のサザエさん”と称されるように、書店で堂々と販売された。

 『富士山』のタイトルは、彼女の生まれ故郷である静岡をイメージした名称で、年4回の四半期発行だったが、どの書店でもレジ付近に置かれるほど、本として特別待遇されていた。

 全盛期の(故)手塚治虫氏でさえ、『鉄腕アトムクラブ』が通販だったことを思えば、如何にもも子現象が凄いかが分かってもらえるだろう。

 しかし、その彼女でさえ『富士山』の発行は4号目の1年間発行で終了してしまった。最初から1年契約だったというが、採算が合えば出版社は必ず継続契約していたはずで、おそらく売れてはいても採算に合わなくなってきたというところだろう。
 
どういうことかというと、本というのは必ず右肩上がりでないと発行継続が難しいということなのである。
 それはどの雑誌でも殆ど同じで、最初の数年は赤字覚悟でも右肩上がりなら本は発行されつづける。しかし、そうでないかぎり本は3号か4号で終わってしまうのだ。

 それでも、大手出版社から流通にファン対象本を発行させた彼女の実力は相当なもので、漫画界の大きな快挙と言えるだろう。
              
 今や彼女は、『ガロ』(青林堂)出身で”江戸研究家”の杉浦日向子氏同様に、漫画家よりも文化人という扱い方を受けはじめた。
 漫画家の里中真智子氏も、お固いはずのNHKの歴史シリーズ等でお馴染みになるほど、文化人という扱い方を受けはじめている。

 逆に、不思議なことだが、男性漫画家で文化人扱いされた人は皆無と言っていいほどいない。
 確かに手塚氏など一部の男性漫画家は、亡くなった後で文化功労者として功績を讃えられることもあるが、手塚氏は死ぬまで現役漫画家を貫いた人物だった。
 (故)石ノ森章太郎氏も文化人という扱い方をされたことを知らないし、(故)藤子・F・不二雄氏についても同様だ。
 このあたりは日本文化の側面から研究すると面白いかもしれない。

 ところで『富士山』(3号)の中に、おーなり由子氏が登場した時は驚いた。
 彼女は子供のころは大成由子と言って、大阪府高槻市に住む漫画の大好きな少女だった。
 今も彼女の漫画本を読むと、JR高槻駅(大阪府)前にあった西武デパートの頃を思い出す。そこのカルチャーセンターで、私が「漫画・イラスト教室」を開いていた時、小学生なのに天才的な画力を持った一人の女の子が入会してきた。その子が大成由子ちゃんだった!

 『富士山』に、もも子氏が友人の由子ちゃんの大阪の自宅に泊まりにいった事などが書かれていたのを見て、初めて”さくらもも子&おーなり由子”の間柄を知った。そういえば両方とも集英社の漫画家としてデビューしていたし、集英社は漫画家を必ず自社で囲い込む為、本来はライバルであるはずの漫画家の内部結束も強くなるのである。

 私の教室では、当時、洋裁をしていた由子ちゃんのお母さんもイラストを学んでいた為、親子同時に教えたことになる・・・・両方ともケタ違いの美人で、教室が一変に華やかになったことを思い出す。

 人生、狭い分野で長く生きていると、たった1冊の本から自分と関わる人間模様を垣間見ることができるものである。
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