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 「トキワ荘」編(第5回)

 20年ほど前のアメリカで出された統計で、青年期にあまり睡眠をとらずに徹夜を連続するような生活パターンを送った若者は、60歳前後で死ぬ者が多くなる・・・・という発表が出されたことがある。

 私はそれを『リーダーズダイジェスト』(当時)を読んで知ったが、統計学ということなので、あまり気にもとめなかった。
 なぜなら、統計学というのは、頭を冷蔵庫の中に入れ、足を焚き火の上にかざせば、ヘソ当たりがちょうど適温になる・・・・という類のものと思っていたからである。(実際そういう馬鹿な面が多分にあるのも事実)

 しかし、漫画の神様と呼ばれた手塚治虫氏が、89年2月に61歳そこそこで胃癌のためこの世を去った時、そのデータが頭の中を過った。
 特に手塚氏は医学博士でもあったため、自己管理だけは徹底していると思っていたのだ。
 しかし、後に、家族や様々な人の証言により、手塚氏は相当無理な毎日を送っていたことが明らかになったのである。
 毎日を締め切り締め切りに追われるようにして過ごし、寝る時間を削って仕事をしてきた手塚氏の姿が浮き彫りになってきたのだ。

 そういえば手塚氏は、若いころから売れっ子漫画家で、凄まじい連載量を抱えながら大学を卒業し、博士号を取得した人物として知られるが、裏返せばそれだけ睡眠を取らなかったということだ。

 手塚氏は、トキワ荘に24歳の頃に住み込んだはずで、それまでも徹夜徹夜の連続生活だったはずである。

 これが手塚氏だけなら、死因が胃癌であったし、体質的なものですますこともできるだろう。
 ところが、トキワ荘の住人で新漫画党の党首だった寺田ヒロオ氏まで、61歳で他界してしまったのである。
 生活管理を徹底していた寺田氏も、連載を幾つも抱えて多忙を極める生活をしていたことは分かっている。つまり、決まった時間に寝て起きる一般人と比較すると、寺田氏さえ不摂生な部類に入るのだ。

 それだけではない。藤子不二雄の片割れである藤子・F・不二雄(藤本弘)氏が亡くなった年齢が、何と63歳なのである。
 それは日本人の平均寿命が伸びている現状から見ると、間違いなく若死にである。
 そして、石ノ森章太郎氏が癌で亡くなったのも、これまた61歳なのだ。

 赤塚不二夫氏も、現在、癌宣告を受けているらしいが、アルコール中毒の方が心配なほど、いつもアルコールが手放せない。
 つまり、手塚氏、寺田氏、藤本氏、石ノ森氏らが、ほぼ60歳少しで亡くなってしまい、赤塚氏も63歳で癌宣告を受けている状態は、どう考えても尋常ではないのである。

 さらに、トキワ荘に通い新漫画党のメンバーでもあった園山俊二氏は、60歳を待たず、58歳で病死している。

 こうなってくると、アメリカで出された、青年期に徹夜をつづけると60歳前後で若死にするというデータは恐ろしいばかりの信憑性を帯びてくる。

 その一方で全く無事なのは、漫画が売れずに徹夜をほとんどしなかった鈴木伸一氏と、早々に漫画家を諦めた森安直哉氏なのだ。
 現役の漫画家では、心霊漫画で有名なつのだじろう氏、オカルト色の強い漫画を描く藤子不二雄・A(我孫子元雄)氏、そして女性漫画家の水野英子氏が無事で漫画を描きつづけているが、水野氏などは4カ月しかトキワ荘に住んでいなかった。

 又、女性は男性と比較して対応力に優れるので、敢えて独断で度外視するとして、健康的に問題のないトキワ荘組の現役漫画家は、二人共オカルトカラーを強く押し出している点が共通している。
 これでは、オカルト趣味が長生きの突破口かとさえ、本気で考えてしまいそうである。
 冗談は別にしても、若いからといって、青年期に余りに不摂生な生活をしたり、生活のバイオリズムを狂わせる徹夜をつづけるような生活をしない方がいいようである。
 そういえば、青年期というのは、爆睡したり、10時間以上は平気で寝てられる年代である。
 裏返せば、体がそれを求めているのであって、そこを無理に徹夜徹夜でダメージを与えると、結果的に自分の命を削ってしまうということになるのだろう。
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