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飛鳥昭雄の漫画家人生
第89回 日本全国怪奇ベスト10
 再び『ぴょんぴょん』(小学館)の企画物である。

 「日本全国・怪奇話ベスト10」で、筆者は構成・イラスト・写真で協力している。

 人面犬や花子さんブーム真っ盛りで、他にも座敷わらし、ツチノコ、コックリサンは勿論、マラソンばあさんなどが満載という企画だった。

 しかし、お化けブームが去ると筆者の出番は無くなり、その後、2年ほどして『ぴょんぴょん』は廃刊してしまった。

 ところで、小学館に限らず出版界という所は“廃刊”という言葉を嫌う。

 だから“休刊”という言葉を使うことになるのだが、それは廃刊では聞こえが悪いからだろうか。

 これは太平洋戦争で日本がよく使った「撤退→転進」や、未だに使っている「敗戦→終戦」と同じかもしれない。

 確かに「終戦記念日」を「敗戦記念日」にしたら、国民の向上心や労働意欲が減退するかもしれないし、精神的にもマイナスだろう。

 休刊とは字の如く“お休み”だが、それなら再び蘇った雑誌はあるのかとある出版関係者に聞いてみたら、実際は“ある”という。

 これはまいった。そういう雑誌が存在する以上、休刊は正しい表記となるのだが、実際は99パーセント蘇ることは無い。

 雑誌が廃刊するということは利益率が悪化(または利益が一切上がらなかった)ことを意味し、その損害額は漫画雑誌では億を越えるというのが常識である。

 どんな雑誌であれ廃刊になると、サラリーマンである編集よりも、自営業の作家の方が深刻な事態に陥ることが殆どである。

 漫画雑誌の場合は特に深刻で、筆者の知っているケースでは、連載が始まってマンションを購入した直後に廃刊・・・・・後は悲惨の一語に尽きる。

 廃刊を知らされるのも多くの場合は突然で、酷い場合は、年末の忘年会で皆が来年も頑張るぞと盛り上がった直後、編集長から来年から本は出ない・・・・というケースもあったようだ。

 それどころか編集長さえ知らされなかったという廃刊が『少年キャプテン』(徳間書店)で、次号の宣伝まで打たれていたのに本は出なかったのである。

 つまり・・・・編集長も知らされていなかったのである。

 読者も混乱しただろうが、漫画家はそれ以上に大変だっただろう。

 廃刊騒ぎはどの雑誌でも作家の方にしわ寄せが行くため、作家は複数以上の仕事先を必ず確保しておかねばならないのだ。

 『少年キャプテン』の場合、中心的な漫画作品は別の出版社に移動して生き残り、そこで更に花が開いたが、そうではない漫画家は突然の廃刊を予測できずしばらくは悲惨だっただろう。

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