◆『女優』
『日本の心シリーズ48、別冊太陽の『女優』(平凡社)である。
明治のトーキ時代から昭和を駆けぬけた大女優たちの姿を、詳細に追った傑作である。
今は女優はいても大女優は一人もいない。昔は確かに大女優は存在したのである。
山田五十鈴、轟夕起子、京マチ子、原節子、高峰三枝子、田中絹代、入江たか子、李香蘭、岸恵子・・・・・
おそらく最後の大女優は、藤純子と吉永小百合で終ったと見てもいいだろう。
それ以後は、良きにつけ悪しきにつけ“並”の女優ばかりが連綿とつづいていく。言いかえれば庶民肌の女優が好まれる時代になっていったということだろう。
男優の世界でも、大物男優は高倉健で終ったと見ていいだろう。後は“並”の男優かアイドルが並ぶだけだ。
昔、女優といえば雲の上の人で、絶対に手が届かない高値の花だった。
まかり間違っても巷に下りてこない謎の存在で、TVにも軽々しく登場などしなかった。
滅多に声も聞けないからこそ、逆に神秘的魅力が倍増し、カリスマ性が高められて行ったのである。今のように出ずっぱりのカリスマなどあり得なかったのである。
古き良き時代と言えばそれまでだが、この本はその時代の空気を正確に伝えている。■







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