百鬼夜話　猫又

閉じる

サイエンス・エンターテイナー飛鳥昭雄公式サイト

参考画像

※猫又より
絵をクリックで画像拡大

日本の妖怪　猫又

　今回は「化け猫」である！
　動物が化け物になるとすれば「猫」が最もイメージにあうというと、猫は怒るかもしれない。いや、猫をペットにしている人は気を悪くするかもしれない。

　しかし、喜怒哀楽が一目で分かる犬の単純さと比べると、やはり猫は何を考えているか分からないところがある。犬は喜ぶと尻尾を振り、怖がったり意気消沈すると尻尾を股座に隠すので分かるが、猫はそういう仕草を殆ど秘したまま、不思議な眼差しだけを向けるのである。

　しかし、猫を飼っている人に言わせると、猫は頭がよく性格も一匹一匹違っていると言う。それに怒ると尻尾をボンと膨らませると言う。
ところで昔、日本で「レオポン」というライオンと豹を掛け合わせた動物を作ったことが話題になったが、お手軽掛け合わせで、猫と犬を掛け合わせた一家があって、ＴＶで初公開していた。ところが、動物学者が出てきて「猫と犬は動物学的にそれほど差は無くこんなものは意味が無い」の一括で、その一家の有名人への野望は果敢無くお終いとなる！

　本題に戻ろう。猫が恨みで変じたものを「化け猫」というのは御存知だろう。鶴屋南北の「独道中五十三駅」に登場する化け猫は、一人の男を巡り妹と恋敵になった姉が復讐を遂げる妖怪話である。姉は妹の策に嵌まって非業の死を遂げるが、最後は生前可愛がっていた猫に恨みを託す。この猫こそ、その昔、仏教をおそれて日本に渡来した猫又で、遂に姉に代わって復讐を遂げるのである。

　日本では古くから猫を飼い始めるときには、いつ頃まで飼ってやるからと言っておかないと、いつまでも家を去ることなく最後は神通力に得て化け猫になるという。特に尻尾の先が二股に分かれると要注意、たちまち猫又となり災いを引き起こすとされる。
　俗に「猫は三日で恩を忘れる」というが，妖怪変化するや執拗な一面を垣間見せるのだ。そのことで猫を人間の女性に似ていると見る風潮がある。女心と秋の空・・・女は愛情より復讐に十倍も力を注ぐ・・・・等々。何か背筋が寒くなってきた。そういえば猫かぶりで本性を隠すのは女性に使われる言葉ではないか。

　これだけだと如何にも猫は意地悪い代名詞のようで、悪者とまで言わなくても得体の知れない生き物みたいだが、言いかえればそれだけ頭が良いことの証明でもある。
　ところが、陰に対する陽のイメージの猫もいるのである。「招き猫」である！

　招き猫は金運や幸を呼びこむ目でたい猫で、今も商売人のみならず多くの人々から愛され親しまれている。実際、大きな猫の置物を捜すと貯金箱になっているのには閉口する。池袋サンシャインのナジャブ人形まで全部貯金箱なのだ。それだけ金運と関わるのだろう。
ところが、世の中うまくしたもので、逆の言いまわしも残っているのである。「猫に小判」だ！
　価値のわからぬ者に貴重なものを与えてはならない意味で、「豚に真珠」と同意語で使われるが普通だ。招き猫と比べ相当失礼な言いまわしである。

　ところで世界で日本にしかいない猫もいるというが、それは三毛猫という。また、四国を含む関西に多いのが尻尾の切れたような猫である。中には尻尾が“くの字”に短く曲がった猫もいて、世界で重宝がられている。いったいこういう猫は何処からきたのだろう？
　最近、秋田犬がヨーロッパを含む大陸にもいることが分かり、日本人のルーツが解明できる一つの手立てになる可能性もあるだけに、この手の猫のルーツは非常に興味深い。

　ところで問題の化け猫のことだが、二股になるので猫又というのだろうが、金毛九尾の狐と同じく大陸から渡来する。香川県では年老いた猫がいると小豆飯の上に魚を添え、真っ赤な日本手拭を頭に被らせると、二度と家に戻ってこなくなるとされた。
　だが、実際に年老いた猫の尻尾が二股に割れるところが確認されたわけではない。学者などに言わせると、大体が怪我で尾が裂けた猫を見て人々が言い伝えた・・・・程度で終わるのが普通だ。
猫又の謎を解くには，別名である「火車（カシャ）」を見なければならない！
　火車は地獄に悪人を運ぶ車であり、「宇治拾遺物語」などの古い文献によると、いつも火炎を発しながら空を飛び、あの世とこの世とを往来する交通機関とある。よって中国では機関車のことを火車と呼ぶ。

　しかし、実際の火車は炎を発しながら人を裁くために天と地の間を飛翔し、その車輪の数は４つ・・・・もはや何かお分かりだろう。
人は全て罪人であるなら「神の戦車（メルカバ）」の象徴である「生命の樹」は人の悔い改めのために存在する。しかしもう一本の樹は「死の樹」で、どちらを選ぶかはその人に任される。猫又の尻尾が二本に分かれている理由はそこにある。■

１：ろくろ首	2：提灯小僧	3：天狗	4：鬼	5：一つ目小僧


6：河童	7：九尾の狐	8：鵺（ヌエ）	9：猫又	10：龍


11：のっぺら坊	12：人面樹	13：足洗い屋敷	14：狸	15：送り拍子木


16：灯りなし蕎麦	17：片葉の葦	18：おいてけ堀	19:落ち葉なしの椎