ASKA AKIO WORLD サイエンス・エンターテイナー飛鳥昭雄公式サイト
 参考画像
※葛飾北斎画
絵をクリックで画像拡大
 




日本の妖怪 
提灯小僧
 妖怪変化を「物の怪」と書くように、物が変じて怪しくなったものが妖怪である。
 物が変じた妖怪でトップの座を争うのが、唐傘〔からかさ〕と提灯〔ちょうちん〕が変じた妖怪だろう。
 どちらも江戸時代の日常生活の中で、必須アイテムだった品の物の怪だからだろうか?

 今回はその中で、「提灯お化け」または「提灯小僧」を取り上げてみたい!
 最近の子供に”提灯”と言っても分からないかもしれないが、盆踊りなどで電球の入って灯っている、中太りの円筒形の紙袋とでも言うと何とか通じるだろうか。

 私が初めて提灯小僧と遭遇したのは、怪談映画「東海道四谷怪談」だった。
 お岩の幽霊におののく伊右衛門が、無茶苦茶に刀を振り回した時、提灯がバックリ割れて火がつき、恐ろしいお岩さんの顔がだぶる時に、提灯のお化けだと思ったのである。

 だから私の頭の中で提灯お化けとは、絶対にお岩さんのイメージなのだ。
 お岩は幽霊だが提灯は妖怪ということは十分理解しているが、どうも最初のインパクトが強すぎたのだろうか、未だに「提灯お化け=お岩さん」なのである。
 いわゆるトラウマというヤツだろう。

 そこで、実際の提灯お化けを調べていくと、宮城県仙台の「提灯小僧」という妖怪に行き着く。
 提灯小僧・・・・自分の初体験では、そんなに可愛いイメージではなかっただけに、いささか拍子抜けするが、内情を知っていくと意外にそうでもないことが分かる。

 お岩さんというのは実在の人物で、田宮家に婿として入った民谷伊右衛門の妻として、四谷左門町に住んでいた。
 しかし伊右衛門はやがて身を持ち崩し、お岩の父を惨殺した後、産後の日立ちが悪いお岩を見限り、隣に住むお梅とねんごろになる。
 その結果、伊右衛門とお梅は、お岩を毒殺してしまうのである。

 現在、四谷左門町に「お岩神社」があり、線香が断えることがないのは、そういうお岩に庶民が同情しているからだ。

 宮城県仙台の提灯小僧の方はどうかというと、やはり江戸時代に仙台で無慈悲な辻斬りが横行し、泣く人が増えていたことに関係があるようだ。
 その時に殺された霊が提灯に取り付き、小雨の降りしきる夜になると城下町に現れ、通りがかる人に次々とまとわりついたという。
 しかし、提灯小僧の方は祟るというわけではないらしい。

 しかしながら、どちらも理不尽な目にあわされた弱者が、恨みを抱いて出てくる点では一致しているのである。
 そこで当時の浮世絵を調べると、「勧善懲悪読切講釈」(貞信画)という浮世絵があり、そこに民谷伊右衛門とお岩の絵が描かれていた。
 そこでは何とお岩さんが”提灯姿”になっているではないか!
 やはり、お岩さんの提灯お化けは存在していたのである。

 その最たるものが、自ら画狂人と称した葛飾北斎の「百物語お岩さん」だろう。
 やはりバックリ口を開けた提灯と、髪の毛が抜け落ちはげ上がった姿のお岩さんの顔が重なっている。
 このことから、物に憑依した幽霊も江戸時代では考えられていたことが分かる。しかし物が変じた物の怪ではないので、敢えてお岩さんの場合は「霊の化」とでも名付けておこう!

1:ろくろ首 2:提灯小僧 3:天狗 4:鬼 5:一つ目小僧
6:河童 7:九尾の狐 8:鵺(ヌエ) 9:猫又 10:龍
11:のっぺら坊 12:人面樹 13:足洗い屋敷 14:狸 15:送り拍子木
16:灯りなし蕎麦 17:片葉の葦 18:おいてけ堀 19:落ち葉なしの椎

UP
CORAMUN
筆取前話
浪漫サイエンス
漫狂画人
百鬼夜話
1:ろくろ首
2:提灯小僧
3:天狗
4:鬼
5:一つ目小僧
6:河童
7:九尾の狐
8:鵺(ヌエ)
9:猫又
10:龍
11:のっぺら坊
12:人面樹
13:足洗い屋敷
14:狸
15:送り拍子木
16:灯りなし蕎麦
17:片葉の葦
18:おいてけ堀
19:落ち葉なしの椎
ASKAZEERA支局
 ←BACK